疫学総論:記述疫学・分析疫学・実験疫学

疫学研究は三段階に分けられる。

  • 第一段階を記述疫学(現状把握と仮説を立てる。)
  • 第二段階を分析疫学(仮説の検証)
  • 第三段階を実験疫学(因果関係の決定)

という。

記述疫学

記述疫学とは疫病の頻度や分布を記述し、仮説を立てること。

わかりやすく言えば、集めたデータをグラフ化して、相関性を予想したりすること。

分析疫学の土台となる仮説を立てることが記述疫学の目的である。

横断研究

ある1時点における曝露と疫病発生の関連を調べる。

例えば,2021年のタバコ喫煙者と肺がん発生者を調査したならば、それは横断研究である。

とにかく、ある1時点のみのデータを集めた研究のことである!!

被験者を追跡したり、過去を遡ってデータを集めているわけではないことに注意!!

生態学的研究

集団単位のデータによって、曝露と疾病頻度を比較する。

具体的には、茶の名産、静岡県と東京都でがんの発生頻度の違いを調べる、など。

集団ごとの比較である。

分析疫学

分析疫学には主に2種類の研究が存在する。

症例対照研究

症例対照研究は、特定の症例に罹ったものと疾患に罹患していない対照群を比較する。

それぞれが過去に特定の暴露があったかどうかを調べていく。

過去を遡るので後ろ向き研究などと言われている。

具体的には、

  • 肺がん罹患者と肺がんに罹患していないものをあつめる。
  • その後、それぞれのグループのうちどのくらいが過去にタバコを喫煙していたかを調べる。
  • そして、統計学的手法を用いて曝露と疾病の関連性を調べる。

コホート研究

コホート研究は一定期間にわたって集団を追跡調査する研究手法である。

一定の要因に曝露している曝露群と、非曝露群に分けて長期間観察する。

そして要因と疾病の関連性を調べる。

未来へ追跡する調査なので、前向き研究などと言われている。

具体的には、

  • タバコを吸うグループと吸わないグループに分ける
  • それぞれを10年間追跡して、肺がんに発症した者の数を調べる。
  • 統計学的手法を用いて、肺がんと喫煙の関連性を調べる。

症例対照研究vsコホート研究

症例対照研究の強み

  • 費用と労力が小さい
  • 観察期間がない
  • 稀な疾患を調査できる。

症例対照研究の弱み

  • 記憶に頼るので信頼度が低い
  • 罹患率を計算できない(理由は別記)

コホート研究の強み

  • 現時点で起きていることなので信頼性が高い
  • 罹患率を計算できる。(理由は別記)

コホート研究の弱み

  • 観察期間が十数年とクソ長い
  • 労力と費用が大きい
  • 稀な疾患は困難(長期間かけて関連性ありませんでした〜、なら調査期間と費用が水の泡になる。)